精神保健活動上の代表的な問題とその対策

精神保健学
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精神保健学

【ポイント】

  • 心に重点を置いた精神保健学の活動を学ぶ
  • 生活環境において心の不健康を呈する事象について理解する
  • 心の健康を守る方法と制度について検討する

レポート文例

生活共同体である家族は、その存続と構成員の結合を維持するために、各個人が特定の役割を分担する形をとっている。しかし学歴偏重の社会のなか、親の願いは過度な進学熱や教育期待へと結びつき、親子の認識のずれを生む。

また親の養育態度や夫婦の不和、家庭内トラブルは子供の非行や問題行動の発生の要因となる。とくに女性の就業率の上昇と高学歴化の進展は少子化につながり、長寿化の影響を深刻にしてきた。

自分たちの生活プラス老親の扶養期間の延長は、労働意欲の低下や精神健康度の低下につながる危惧を含んでいる。

各個人の内面で起こる役割葛藤は、適切に解消されない場合、家庭崩壊などの危機を生む危険性をはらみ、社会問題として捉える必要がある。

そのためには外部の医療・教育・福祉・法律などの関係者に相談することのできる体制を準備する必要とともに、妊娠・育児からの精神保健の教育の視点が必要であると考えられる。

現在の高学歴時代は16年間を学校という集団の中で過ごすことであり、知的偏重の教育方法とあわせ、教師の在り方は少なからず問題を生むことになる。思春期には心身共に不安定なため、この時期に親や教師に対する不満やストレスは信頼関係の喪失を生み、いじめ・不登校・校内暴力・少年非行となって表れる。それらの偏重教育は普通校の障害者締め出しにもつながり、ひいては学校教育の在り方、家庭内の教育に基づく問題として考えられなければならないが、まずは学校精神保健としての心の健康を目指し、ストレスの少ない学校つくりの努力を必要とする。

多くの先進国では、精神疾患に関する教育が行われるようになってきており、教科書にも詳細な記述が行われているなか、わが国では、1980年代から保険教育のカリキュラムから精神疾患についての記述が一切なくなっている。今教育を受けている子どもたちも、子どもを教えている教員も保護者も、早急に精神疾患についての系統的な教育を受けることが大切なことだと考える。

地域保健活動が市町村に足場を置くことで学校保健との関係を密接にすることができる。また現在、定期的にカウンセラーが訪問するなどの対策をとる学校も増えており、養護教諭の活動と合わせて期待されている。

また職場では気の合わない人とも付き合う必要があり、人間関係の軋轢をはじめ様々な問題が生じる可能性がある。最近は職場の高齢化が進み、仕事上欠かせないものとなった、VDT作業による諸問題を抱えている。職場での精神保健を考えるには、その労働者が生活者として抱えているメンタルヘルス上の問題がどうなっているのかを考える視点が大切である。

これらの問題は職場自体の重要な課題であり、企業としての対策が検討されなければならない。そのひとつとして、労働安全衛生法により、50人以上の従業員を抱える事業所では産業医の設置が義務付けられており、医師よりも身近な理解者として役割を果たしている。

都道府県レベルでは、産業医・産業保健スタッフ・衛生管理者等の産業保健にかかわるスタッフの支援を行なうことを目的として、都道府県産業保健推進センターを持っているところもあり、有効に機能していく必要と、地域との精神保健活動との連動が望まれる。

地域社会を中心とした精神保健活動は1960年代に入ってから重要視されるようになった。かつて精神衛生活動が植え付けてしまった地域住民の偏見の問題が、精神障害者のリハビリテーションを阻んでいる現状がある。つまり地域住民の心の健康を高める精神保健活動こそが精神障害者の地域ケアを推進することに他ならない。

地域精神保健として、精神疾患に対しての正しい知識の普及に力を入れ、地域住民の理解と参加を促し、地域の特性に応じて精神障害者の社会復帰のための環境を整えるなど、精神疾患の発症が未然に防げるよう指導を行うなどの活動を続けていく必要がある。

【引用・参考文献】