精神障害者の就労支援の制度と実態について

精神障害者の生活支援システム
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精神障害者の生活支援システム

「ポイント」

  • 精神障害者の支援に関する制度と福祉サービスの実際と背景について学ぶ
  • 精神保健福祉士の相談援助活動と保健・福祉・就労などのサービスとの関連を理解する
  • 精神障害者が地域で生活するために就労・雇用支援の体制などの現状を学ぶ

精神障害による社会的引きこもりなど、問題が表面化するのは家族や知人からの相談がほとんどである。精神保健福祉士としては、精神科医による精神療法やカウンセリングについて、場合によっては投薬を必要とすることを説明しなければならない。
同時に経済的背景にも配慮し、医療費は自立支援医療(精神通院医療)などが使えることも説明する必要がある。

精神科に受診する行為は一般にはまだハードルが高く、受診に至るまでが難しいのが現状である。
その場合はPSWがインテークの介入を行うなど、医師と連携しながら医療に結び付けていく方法がとられる。インテークでは本人からの話を引き出すように行い、次回の来所日時を約束できればそれでよしとする。
たとえば医師のカウンセリングを定期に受けられるようになれば、グループの支援場面の導入を検討していくことができる。面談の回数を重ねる間に、本人の緊張場面やリラックス場面を読み取っていくことが大切となる。

スタッフはその間、人を変えずに対応することが肝要である。親近感を持てるようになったら本人の趣味などを勘案し、適当と思われるデイケアへの参加を提案する。
そのあたりでは、相談支援専門員が個別支援計画書を作成できるよう、本人との面談を並行して行うこととなる。

あるいは、医師や障がい課からいきなり相談支援の事業所に支援依頼が入る場合も多い。が、一律に障がい者をひとくくりにするのはどうしたものかと考える。
現在は、身体障害者も知的障害者も精神障害者も、同じ相談支援専門員で担当することができる。受容と供給の問題で仕方のないことだろうが、本来、各専門ごとに分けて担当するべきだと考える。
精神障害者の支援は、精神保健福祉士もしくは相応の知識と経験を持った者が支援するべきであるだろう。

まず、服薬による彼らの影響を考慮して対応する必要がある。服薬のもたらす生活不便を無視していては支援が成り立たないだろう。やる気がないなどと受け取られることが多い症状については、社会的に無理解が多く、常勤雇用を良しとする風潮の中で彼らは生きづらい現実を抱えていることを知る必要がある。
薬を飲むことで、彼らの集中力はかなりの制限を受け、抗精神薬を飲むことでも動作の緩慢や疲れやすい状態を常に有しており、長時間の集中や緊張には耐えられないからである。
統合失調症の予後についてはおよそ3分の1が寛解し、3分の1が慢性化する。残りの3分の1は何らかの援助を受けながら社会生活をしているといわれ、ひどい眠気・アカシジア(静坐不能)・硬直状態など向精神薬の副作用を抱えている場合が少なくない。

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引きこもりの人が、決まった曜日と時間に通所できるまでには、多くの困難が考えられるので、医師と連携しながら精神保健福祉士はその都度丁寧に対応しなければならない。
デイケアの継続が図られると、日常に習慣性が付いてくることで、笑顔が見られるようになる、昼夜逆転が軽減する、目標を持てるようになるなど、本人に様子の変化が表れてくる。
その段階になると、専門職との面談のなかで「仕事がしてみたい」という言葉がきかれるようになるだろう。
だが、待ってましたと結論を急いでは、これまでの支援が元も子もないものになってしまいかねない。

まだまだ興味を示しているだけの状況に過ぎないことが多い。まして躁状態の場合にはすぐにも就職したいなど待ったが効かず、またはクローズ(自分の病気を隠して話をすすめる)のまま勝手に面接で仕事を約束してくるなどの常軌を逸した行動に出る場合がある。
サービス開始後は刺激も多くなり、気持ちの高揚や暴走が表出しやすいため、支援者は冷静に注意深く見守る必要がある。
いかに精神障害者の一般就労が困難であるかは、次の厚労省のデータから読み取ることができる。


障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援の4種類のサービスがある。
障害者総数964万人のうち、18歳から64歳の在宅者数が約377万人居る中で、就労移行支援に約3.4万人、就労継続支援A型に約7.2万人、就労継続支援B型に約26.9万人とのデータがある。(令和2年3月時点)

これは何を意味するのだろうか。もちろん、データ漏れや継続できていない人や、短いスパンで多種のサービスを利用した人などが含まれるだろうが、これほどに一般就労につながりにくいという現状が見えてくるのではないだろうか。

以下、各就労系障害福祉サービスの概要を述べる。
<就労移行支援>企業への就労を希望する者に対し、標準利用期間2年の範囲で活動機会の提供、職場体験などの機会提供、就労に必要な知識及び能力の向上のための訓練・支援及び相談対応を行うものである。
<就労継続支援A型>移行支援を利用したが、企業雇用に至らなかったものや特別支援学校卒業後、就職活動を行ったが企業雇用に至らなかったもの、または就労経験はあるが、現在雇用関係がないものなど、雇用契約に基づく就労が可能であるものに対して、雇用契約の締結などによる就労の機会を提供・支援するものである。18歳以上64歳までを対象とする(平成30年4月からは一定の要件を満たすことで65歳以上も可能となった)
<就労継続支援B型>就労経験があるが、一般企業への雇用が困難になった者、または障害基礎年金1級受給者、もしくは既述に該当しないが就労移行支援事業者や計画相談支援事業者などによるアセスメントにより、就労面にかかる課題などの把握が行われている者が対象となり、雇用契約に基づく就労が困難である者に対して就労の機会を提供・支援するものである。A型と違って年齢の上限がない。
<就労定着支援>  就労移行支援、就労継続支援、生活介護、自立訓練の利用を経て一般就労した障がい者で、就労後6カ月を経過したものが対象となる。
さらなる就労の継続を図ることを目的とし、障がい者を雇用した事業所、障害福祉サービス事業者、医療機関などとの連絡調整、障がい者が雇用されることに伴い生じる職場や日常生活の問題などの相談・指導及び助言などの必要な支援を行うものである。


【引用・参考文献】