法学
「ポイント」
- 任意後見制度と法定後見制度の関係を明確にする
- 任意後見利用後に法定後見の審判がなされた場合についても確認
レポート例
精神障害、知的障害、認知症など何らかの理由により判断能力が不十分な方々のために、社会的に自己決定を可能な限り尊重していくという理念から制定された成年後見制度には、任意後見制度と法定後見制度がある。
本人の意思で将来の判断能力の低下に備える意味合いの強い任意後見制度に対し、法定後見制度は家庭裁判所に申し立てをする必要があり、審判を受けて補助・補佐・後見の制度が適用される。
以下、法定後見制度の内容を説明する。
補助の対象者は「判断能力が不十分な者」であり、本人に困難な契約や財産管理に支援が必要な場合に対象となる。
本人以外のものが申立人である場合には本人の同意が必要となる。申立人は民法12条第1項に定められる行為のうち、申し立ての範囲内で家庭裁判所が定める「特定の法律行為」が決定される。ただし、本人の自己決定を尊重するため、日用品の購入その他日常生活に関する行為は、同意権の対象から除かれる。本人ならびに補助人は、本人が補助人の同意を得ないでした本人に不利益な行為を取り消すことが出来、同意権と取消権は表裏一体をなす。また補助人は「特定の法律行為」に代理権を持ち、その際、代理権付与の審判と本人の同意が必要となる。
保佐は「さらに著しく不十分な者」となり、主に民法13条1項に規定されている範囲であれば同意権が与えられ、この範囲で保佐人の同意なく、被保佐人の行為の取り消しが可能となる。
代理については補助の場合と同様に本人の同意が求められる。
後見は症状が重く、認知・判断能力がなく日常生活に困難をきたしている場合に適用される。財産管理・法的手続き・契約などに関して後見員には代理権と取消権が与えらえる。この場合、判断が不能との解釈から後見人に同意権は付かない。
それは、補助・補佐との違いで「同意の対象とされる法律行為」のみならず、「本人が自ら行った法律行為」全般に及ぶものである。
ただし、後見の場合も「日用品の購入、日常生活に関する行為」については取消権を行使できないが、
本人を代理して行うことが出来るものである。
それぞれ本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長により適用の申し立てができる。
判断能力があり、自己決定が可能な人には任意後見制度がある。
あらかじめ自分の意思で代理人を選任し、将来判断能力が低下し財産管理や介護・医療の手続きを行ってもらうために、公正証書により委任契約を結んでおくものである。
任意後見契約を交わしている場合は、法定後見より任意後見が優先され、法定後見の開始を申し立てても原則として開始の審判はなされない。
ただし例外として、状況から判断不能が進行した状態と判断されたり、法定後見を利用することが本人の利益のために必要と判断されたときは、任意後見法第10条第1項により、任意後見を終了して法定後見に移行することが可能とされる。
ただし、任意後見の解除には以下のような正当な事由を必要とし、家庭裁判所の許可を要する。
- 任意後見の代理権の内容が不足してきて同意見・取消権による保護を必要とする状態である
- 任意後見人の報酬があまりに高額で継続できない
- 任意後見人に不正行為などの不適切事由がある場合 など
また判断能力の衰えが進行し、日常生活が滞り危険性が考えられるにもかかわらず、本人が契約を拒否する場合なども法定後見への移行を要するといえるだろう。
任意後見は、契約内容を十分理解し自分自身で判断できる場合に可能な制度であって、判断や意思能力が欠けている場合に、本人の意思を代行・補完するために成年後見制度が機能するものである。