福祉法学
「ポイント」
- 更生保護の目的と基本内容を理解する
- 更生保護制度の機関を確認する
レポート文例
更生保護の目的は、更生保護法第一条に定められているとおり、「犯罪を犯したものや非行のある少年に対して、適切な処遇を行い再犯防止や非行の撤廃、社会の一員として自立し善良な市民となるための改善更生を行うとともに、」犯罪予防活動を促進し個人及び公共の福祉を増進するもの(要約)」である。
以下、更生保護に該当する内容について主なものを述べる。
①保護観察
保護観察には、保護観察処分少年、少年院仮退院者、仮釈放者、保護観察付執行猶予者、の4類型がある。
それぞれの類型によって保護観察の機関が定められており、保護観察官と保護司がそれぞれの役割を担いながら、協力支援を行っていくものである。
保護観察官とは、保護観察所に所属する心理学・教育学・社会学の専門知識を持った常勤の国家公務員である。一方保護司は非常勤の国家公務員であるが、必要経費以外は無報酬で活動し、対象者と定期の面談を重ねながら日常生活に密着した監督支援を行っていくものである。
対象者の特性に応じたきめ細かなフォローアップを地域の保護司が行い、保護観察官は目的に即した計画を作成したり、問題が起きた時に介入したりなど行い、相互での役割分担が行われる。
②生活環境の調整
対象者の住居の確保をはじめ、保護観察所において対象者の生活環境の調整の一環として改善更生を助けるために、親族に対して理解や協力を求める働きかけを実施している。
たとえば薬物依存の対象者に対しては、引受人・家族会などを開催し、薬物依存の知識や対象者への接し方を助言するなどの支援を行っている。
また関係機関や民間団体の支援先などの情報提供を常に行いながら、住居地の状況を調査し、就労先を含め社会復帰にふさわしい生活環境となるよう、孤立化や再犯防止のために環境調整を行うものである。
住居地には親族・知人宅以外に就労先の寮、更生保護施設やグループホームなどの社会福祉施設が含まれる。
③仮釈放
刑法 第28条に定められており、「改悛の状」があり「改善更生」が期待できる対象者に社会生活の場を与えて、更生や社会復帰の促進を目的とするものであり、その審理は地方更生保護委員会が行う。
釈放された後も刑期の満了までは保護観察対象となり、対象者は生活習慣の改善や相談などの目的のために、定期に保護観察官や保護司との面接を義務付けられている。
その他、応急の救護等及び更生緊急保護、恩赦、犯罪予防活動などが更生保護に該当する。
更生保護を行う専門機関としては「中央更生保護審査会」「地方更生保護委員会」「保護観察所」があり、それぞれの役割で機能を果たしている。
以下、各機関の役割について述べる。
中央更生保護審査会とは、法務省本省に設置され、地方更生保護委員会の決定について審査を行ったり、法務大臣に恩赦の実施についての申し出や仮釈放の審査などを行うものである。
地方更生保護委員会には、保護観察官が置かれており、刑事施設からの仮釈放の許可、仮釈放の取消、少年院からの仮退院の許可に関する事務を行っている。
そこで決定した処分に不服があれば、中央更生保護審査会に審査請求をすることができる。
保護観察所では、罪や非行を犯して保護観察の対象になった人について応急救護や更生緊急保護、社会復帰のための生活環境の調整や犯罪防止活動を行っている、法務省の出先機関である。
保護観察官が保護司との協働で「指導監督」と「補導援護」を行っている。
補導援護では自立を目的として、住居や医療・就職、生活訓練などの助言や支援を行っている。
上記のように各機関がそれぞれの役割を果たし、地域の福祉関係機関などと連携しながら指導・支援が実施されている。
とくに最近では、更生保護と福祉・医療との連携支援に力を入れた取り組みが行われるようになった。
その他、更生保護関連機関には更生保護サポートセンター、更生保護施設、自立準備ホーム、地方更生保護委員会、自立更生促進センター、更生保護女性会、BBS会、協力雇い主などがある。