精神科リハビリテーションの基本原則について

精神科リハビリテーション学
*本サイトには広告が含まれます

精神科リハビリテーション学

【ポイント】

  • 精神障害者を理解し、個体(人)と環境(自然・家庭・職場)のバランスの視点を持つ
  • その人の生きる能力の最大値を引き出して、その人らしい生き方を援助することを理解する

レポート実例

足と靴の関係、いわゆる靴に合わせた足にするのか、足に合わせた靴を探すのかが精神科リハビリテーションの根源と考える

精神保健分野においてのリハビリテーションでは、他の福祉的援助との性格の違いを認識する必要がある。社会福祉では単に対象者のニーズを満たすことを目的とするが、精神科リハビリテーションでは本人の能力を回復させる、あるいは代償することを直接の目的とする。

生活能力の改善・生活支援に資する環境の整備・環境への適応援助とさまざまなアプローチを偏りなく網羅し統合して行うことが必要になる。援助者は多面性・同時性・相補性・整合性の要素を念頭に置き、全体としてどのような効果をもたらすのかを常に考えておかなければならない。

そこには本人のリハビリテーションへの動機づけや意思表明が得られないという問題も内在する。だが、それは当事者に病気についての理解力や判断力の欠如が伴うからであり、一時的に投薬を強制する場合もあり得る。たとえば精神障害を持つ人が自分の意志で治療を求めるまで待つことは、事故で足を骨折した人を病院に歩いてくるまで治療しないのと同じ意味になる。つまりは精神科リハビリテーションは薬物治療を併用してこそ良い結果を導き出す。

適切な処方により再発が減少すれば、リハビリテーションはより効果を上げる、再発防止を十分考慮したものでなくてはならない。同時に当事者の内的動因をふまえたうえで、そのエネルギーを有効に活用できるような具体的で身近な目標設定を行っていくことが大事である。その間も一貫して当事者の理解を得る努力を怠ってはならない。

甘いもので頭を休めて♡

リハビリテーションで大事なことは障害を認知し、自分でコントロールできるようになることである。症状が安定し、自己の内なる資源を発見し、それを強化しながらいろいろな生活技能を補助し習得していく。社交的感覚の低下が見られたなら友人を作ることを再習得し、幻聴があったら、それを無視することを習得し、限られた中で仕事や社会参加が出来るように新しい技術を覚えていくことが必要となる。リハビリテーションのゴールは最終的には本人が決める。援助者はそのゴールを獲得できるように常に主体性回復の視点を持った援助をしなければならない。

また心理社会的なリハビリテーションとして、グループダイナミクスを利用し仲間通しの助け合いを促進することも可能である。精神障害を持つ人が希望を持つには何かの課題を成し遂げることである。本人が努力してやれたという現実ほど、確固たる自信につながることはないだろう。ただ、たとえプログラムが集団で行われたにせよ、当事者個々が目的や意図を異にすることに留意し、決して個別性を無視するものになってはならない。

そのためには、当事者の現実問題を解決するという本来の目的から考えて、有効と思われる技法を臨機応変かつ柔軟に選択し取り入れる姿勢が要求される。時には施設内で行うことだけに限らず、スーパーに足を運び実際に買い物をしたり、また当事者が家主と交渉する場面に、援助者が密接に関わっていくなどの柔軟性をもつことが望ましい。

リハビリテーションで学んだ生活技能は、実際の場で練習してこそ身につくものであり、当事者の現実問題を解決するべく、その各場面に精神科リハビリテーションは援助を行う役割をもつといえる。

【引用・参考文献】