社会保障論
「ポイント」
- 同世代、同所得での給付格差を検討できる
- 社会保障制度のしくみをとらえているか
レポート文例
社会保障の将来については、現役世代の9割以上が何らかの不安を感じており、若い世代において世代間の不公平感を感じている。だが、少子化に伴って、家庭内での親の扶養や介護は大きな負担となる中、社会保障制度があることで自分の生活のサイクルを犠牲にすることなく、社会に委ねることが出来るのも事実である。
2025年までに急速に変化する人口の中で、全世代から引き継いでいる恩恵を考えに入れたとしても、増加する高齢者の社会保障に要する負担は、現役世代の中で不公平感を募らせていくことは否めない。
公的年金の老齢給付を考える際、いちばん検討されるものが生活保護受給金額との兼ね合いがある。国民の誰もが有している“健康で文化的な最低限度の生活を営む権利”(憲法第25 条)を守るためであるのだが、年金と異なって事前の保険料納付がなくとも要件に該当すれば生活保護が受給できる。国民年金保険料を支払ってきたにもかかわらず、老齢給付の受給額が生活保護受給金額を下回るとしたら、明らかに不公平となるだろう。
一方で、将来の老齢給付を上乗せできるよう、一律に定められている国民年金保険料(減免や免除の制度あり)のうえに、被用者は厚生年金保険料を徴収されており、厚生年金保険料の半額は雇用主が支払っている。雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し、同一労働同一賃金の実現をおこなうには、正規雇用者と同一の厚生年金保険料を、被用者と雇用者とが負担することが公平であるだろう。給付と負担の在り方について、世代間あるいは世代内の、公平の観点を十分配慮する必要のうえで、保険料納付の拡大こそが、年金財政の改善に向けて重要なことだと考える。
同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差は不合理なものでないのかを検討しなければならない。基本給・昇給・賞与・各種手当といった賃金のみでなく、教育や福利厚生などについても不合理な待遇差を解消していく必要がある。
給付と負担の在り方については、世代間あるいは世代内の、公平の観点を十分配慮する必要がある。給付と負担のバランスをとるために考えられることとしては
①負担に対する理解を求め、納得のいく負担とし精神的抵抗感を抑える。
②負担の担い手を増やす。
③高齢者も能力に応じた負担を担う。
➃給付の無駄をなくし、出来るだけ増加を食い止める。必要があれば財源の問題や財源方式などを見なおす
⑤給付額を下げる(年金の額下げ)などが考えられる。
(上記はあくまで考察の範囲であり、現実には多種の問題に取り組む必要があるだろう)
では、支え手を増やすにはどうしたら良いか、それは働き手を増やすことに他ならない。そのためには障害者の働く場を広く開放していく必要がある。同時に平等に働ける社会としての環境整備も必要となるだろう。
人生や家族も、昭和の頃とはその姿が大きく変わっているにもかかわらず、政策や制度は昭和モデルをひきずっている。女性の就労についても、育児や介護に左右されない安定した職場環境を作っていかなければならないが、経済の担い手として自立して働くという女性の視点では、考えられていないように思われる。税や社会保障を世帯単位ではなく、個人単位の制度に変更する必要があると考える。現実、年収130万円までの者については、所得がない被扶養配偶者とみなし、所得があるにもかかわらず負担しないで済む不公平も是正されるべきであろう。
また、高齢者にも個人の能力や体力に応じて、働く場所を提供すべきであるだろう。再雇用・継続雇用を促進すると同時に、定年退職制度を廃止していくのはどうだろう。高齢者の大半が社会保障給付で賄っており、公的年金においても医療保険制度においても、高齢者の受給が大きな比率を占めるわけだが、高齢者を一律に弱者と捉え、優遇措置をとる考え方には賛成できない。
社会保障の公平性を求めるには、その制度の枠内だけでなく、税制の改革も求めながら多方面からの環境整備を必要とするものである。