社会学
【ポイント】
- 社会の中のどういう場面で問題が起きているかを述べる
- 解決するための姿勢を考察する
ジェンダーとは「社会的、文化的性差」のことを表し、いわゆる「性別」とは意味が異なり、社会や時代背景によって「作られた」性差と定義されている。
ジェンダーの概念そのものに良い悪いがあるわけではないが、社会や文化において、本人の意思に関係なく、男らしさ女らしさなどを求められることで不平等が生まれていることに気付かなければならない。2021年度の男女共同参画局の調査でも、男性では50.3%。女性では47.1%の人が「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」と思っているという結果が報告されている。
日本のジェンダーギャップ指数は、先進国で最下位であるだけでなく、アジアの中で見ても、中国や韓国、ASEAN諸国(東南アジア諸国連合:タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムなど10カ国)より低いという結果がでており、援助業務に携わる者として、ジェンダー平等への取り組みは重要な課題と言える。
では、現代社会におけるジェンダーの問題を考えるにあたり、実生活の場面ごとに分類してみようと思う。
(1)家庭の中のジェンダー・女子にはかわいく優しい子を、男子には逞しく強い子を求め、また女子には家事を重視し良いお嫁さんに、男子には家事より勉強を重視し、将来妻子を養えるように、など男女で異なった育て方をしていないか。
夫婦間においては、妻を「奥さん」と呼び、夫を「主人」と呼ぶのが通例となっている事実はおかしくないか。夫の意見や好みが優先され、養っているという夫の意識が家族を抑圧していないか。夫婦に上下関係が持ち込まれていないか。男は仕事、女は家事・育児・介護という考えにとらわれていないか。男性の育児休暇がなかなか一般化されて行かないのはなぜか。
1960年代にアメリカのベティ・フリーダンが著書の中で女性が家庭という「居心地の良い強制収容所」に閉じ込める性別分業は性差別だと告発している。日本でも性別分業の歴史が長く、今後の大きな課題と言える。
男女共同参画社会を実現するために、夫婦別姓や女性の体の健康、性についても女性自身が自己決定できる権利をさらに確立していく必要がある。
介護の問題については、介護保険導入以来、めざましい勢いで家族介護から社会介護へ移行を見せているが、まだまだ支援の届かないところで、生きる力をなくしてしまう人たちが居ることを、決して忘れてはならない。
(2)職場の中のジェンダー・男女が対等な職業人であるかどうか。仕事内容を男性向き、女性向きなどと分業していないか。さらにいうなら男性リードで企画立案や指導にあたり、女性がそれに従う構図は起きていないか。女性の管理職がその能力を発揮できる環境下にあるか。暗黙の圧力から女性が責任ある地位を避けていないか。また、男性側も育児休暇や介護休暇を取りやすい環境下にあるか、などに十分配慮する必要がある。
(3)学校の中のジェンダー・学校における習慣や慣行に子供を委縮させるものがないか。教職員の価値観は現在の社会の動きに正しく沿ったものであるかどうか、女の子だから家から通える学校が良い、女の子はだから理系より文系が良いなど、ジェンダーギャップを植え付ける隠れたカリキュラムで子供たちへ影響を与えていないかなど、決して、学校の存在が男女格差を根付かせる場所になってはならない。子供たちが無意識のうちに「隠れたカリキュラム」のメッセージを学んでしまわないように十分気を付ける必要がある。
(4)地域社会のジェンダー・伝統やしきたりで縛られていないか。無報酬労働であるアンペイドワークを担わせていないか。地域への参画のためにエンパワメントを発揮できる環境下にあるか、など政治や行政の中のジェンダーもチェックしなければならないだろう。そのためにはまず、自分の住む町の男女共同参画の実態を把握し、ジェンダーフリーの取り組みを知ることが大事である。
また、人々の現実認識や、意識のありようが大きく影響を受けるものにマスメディアがある。ジェンダーフリーのマスメディアとなっているかを常に敏感な視点で解読し、適切な批判を含め自分たちの伝えたいことが、メディアテラシ―に乗っ取って正しく行われているかを厳しく観察していなければならない。
《参考》令和3年度内閣府男女共同参画局(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究