社会福祉原論
「ポイント」
- 公的社会福祉と民間社会福祉活動の違いを理解する
- 民間社会福祉活動の意味を明確に出来る
レポート文例
社会福祉活動の公的役割としては、日本国憲法第25条に規定されているように、社会福祉実現の責任を持っていることである。
その具体的な制度体系は個々の社会福祉関係法により規定されている。
社会福祉の供給主体は多元化してきており、昭和40年代に公的福祉事業と民間社会福祉事業との間の在り方を示すものとして「国家責任の下で、公である政府が最低生活保障を行い、政府の責任を私である民間社会福祉事業者や準政府機関に委任してはいけない」という考えに基づく公私分離の論議がなされ、民間福祉活動・事業の役割について「公的に果たすべきでない分野や課題については、住民・ボランティア・民間福祉事業の役割発揮が期待される」という見方が一般的になった。
それはさらに「公私関係の特徴は、行政・民間が互いに別のものとして存在するのではなく、行政も民間もその役割を積極的に認め合い、互いに連携する関係にある」という公私協働の考え方に移行している。
また社会福祉法人が税による委託費や補助金によって運営されており、両者の区別がつきにくくなっていることからも、民間組織が社会福祉に果たす役割に期待が寄せられているものとみることが出来る
民間の社会福祉活動の主体として、主なものに社会福祉協議会、共同募金、社会福祉施設を経営する社会福祉法人、ボランティア団体などがある。
民間社会福祉活動の目的としては、住民が率先して自ら参加する活動であるところに意味がある。福祉サービスを提供するだけでなく、活動を通じて同じ地域の住民の福祉マインドを育て、住民相互の関係性を築いていくなど、住民一人ひとりの福祉に対する認識を高め、ひいては豊かな福祉社会を形成していくことを目指しているところに大きな意義をみとめるものである。
行政の責任下で提供されるサービスにおいては、ある程度一定の水準の確保を要するが、民間活動による福祉活動では、地域の特性に応じた独自の融通性を持つ、多様なサービス活動の提供が可能になる。
社会福祉における公私の責任の分担及び役割を考える過程において、いろいろな問題点に気付くことになる。
なぜなら公私論は財政負担の問題だけではないからだ。「公私協働」は責任の役割において、同時に遂行の役割において考えていく必要がある。あるいは、その両方を検討しなくてはならない。
現在の国家責任において、誰がどのように社会福祉の責任をもつのかが問われてくるのではないだろうか。それは単純に公的な部分を私的部分に委託するという問題ではない。
上記に述べた民間福祉活動での融通性に富んだ多様なサービス活動という点において、いかに公的責任が果たされるのかということではないだろうか。
現在では、介護保険制度のように公的サービス受給にも費用の負担が課せられている。
社会福祉の保証は言うまでもなく国民の権利であるからして、公的保証が満たないままの運営をはたして社会福祉とよべるのだろうか。
かたや民間の福祉についてみると、地域福祉・在宅福祉の分野でインフォーマルな部分を家族や親族、知人、ボランティアや互助の人々の福祉マインドに頼り、国の役割をおろそかにしてはいないだろうか。
また、公的サービスが一律の基準に沿い、私的サービスが選択的であるとしたら、当然私的サービスは質の高さと高額の報酬を求め、購買力のあるものが対象となり、格差を生むことにつながらないか。
地域格差や学力格差など、社会サービスの中で起きている問題が福祉の分野に及ぶことにならないだろうか。
それは民間のサービス供給においてどこまでが社会福祉のサービスなのかを検討すべきであり、民間社会福祉活動の公共性の問題も問われなくてはならず、民間の営利サービスは本当に社会福祉なのか、との疑問に行きあたるのである。